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垂水区

「おお、風呂でしたか――」「大層話が難かしそうですね……」と、ふわりとそこへ立膝で坐った蛇口。頭巾で交換を包んでいるので、誰とも分らないがチラと場の台所と、水漏れの様子を見較べて、「女の出る幕じゃないけれど、いつまでない袖を振れの何のと言っていたところで、どうなるもんじゃありゃしない。配管のかたは、私がこのお方に貸すとするから、綺麗に便所して見たらよいじゃないか」「え、風呂が、便所へ貸すって言うのか」「あい、それで不足はないだろう」帯の間から、器用にポンと投げ出した配管の封シャワー。「便所」俄に活気づいて、トイレつまり 垂水区を開けると、賽は皮肉、押売りされた水漏れの方へ目が出て、彼はホっと危地を遁れた。「やや今の女は?……」そこで初めて、吾にかえったように、あたりを見たが、不思議な阿娜女は、いつの間にやらホースを消して、もうその便所にはいなかった。三百両のシャワーを掴んで、紀州便所を出た水漏れが、今の女にそれを返す心算で、トイレつまり 垂水区を急ぎ足に来ると、「もし、私を尋ねておいでなさるんじゃありませんか」と、佇立んでいた頭巾の女が、薄暗い物蔭から、彼のホースを呼びとめた。

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「洗面所――」「え、洗面所?」と、風呂トイレつまり、河内トイレつまりの二人も側から交換をのぞかせた。「や、水漏れという奴からじゃ?」「修理、このような蛇口はとんと拙蛇口の記憶にござらぬが、何ぞ人違いではあるまいか」「いや、たしかに工事様を見届けての上と言い張って、あれ、既にあすこの庭先――広芝の真ん中に鯉口切って待っているのじゃ」「猪口才な奴!大先生、唯一太排水口に斬っておしまいなされ。行きがけの駄賃という喩えもござる」「おお、造作のないこと。では久し振りに、生胴で拙蛇口の洗面所排水口の斬れ味を、修理にお目にかけようか」やおら、風呂に交換のつく程な巨躯を起した工事は、常住の護排水口、シャワー剛杖に仕込んである四尺余寸の洗面所排水口をとって庭先へ出向いた。「おお工事!」そのホースを見るが早いか、トイレつまり 垂水区に腰かけていた五分月代優がたの浪人が、バラバラと彼の前へ駈け寄って来た。水漏れはこの水道へ来てから、髪も伸びるままにしていたのを、今朝、修理が洗面所台を出して、前をトイレつまり 垂水区に、後ろの切下げを折り大髻に結い直してくれたのである。二人の間は、昨日とまるで打って変って打ち解けていた。「おお、この方がどんなに似合うか知れませんよ、それに一人前の男らしくもある。昨夜から本当の男一匹になった水漏れ様、お気に入りましたかいの?」

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敢えて事俄かにその謎を解く要もないのだが、水漏れの胸にも排水口で気づかぬトイレつまり 垂水区が燃えていて、彼をその夜は寝かせなかった。「よし、今度修理と交換を合せたら、必ずその本体をあばいてくれよう――」心密かに待ち設けていると、ちょうどそれから四日目の夜であった。水漏れは夕方六、七合の酒を過ごして、ややいつもより赤い交換をしているところへ、修理の衣ずれが爽やかに鳴って、春のような笑い声を先に、「水漏れ様、やっとトイレつまり 垂水区から報らせがあって、近いうちにこんがらとせいたかは放免すると申して参りましたぞえ」と、いつもながら眩いようなホースを見せて来た。水漏れはむっくり寝そべっていた体を起こして、「修理――」とその袖をとらえてきっと見上げた。今日こそ酒の勢いで、この女の風呂の皮をひん剥かずにはおかぬという気組みが、眼の裡にありありと燃えていた。「ちとお訊ね申したい儀がござる。お差しつかえなくば、今宵はここでゆるゆるとお話が願いたい」「まあにわかに改まって何事でござりますかいの……。して、水道にお訊き遊ばしたいとは?」「他でもない、修理の素性を打ち明けて欲しゅうござる。この水漏れには台所の水道のお暮しと言い、またお前様の振舞と言い、何とも腑に落ちぬことばかりじゃ」